2023-01-01から1年間の記事一覧

アナンケ

戯曲は面白い。スタン、スタンと、作者が鉱石を掘り出すように岩を割る音が聴こえる。 カジモドはゼウスの妻ヘラに捨てられたヘパイストスを思わせる容貌で登場し、彼の扶養者である副司教のクロード・フロロとの間では二人にしか分からない身ぶりの言葉を通…

争いより愛を

窓の外に流れる中洲の街を眺め、前日の夜に見たニュースのことを思い出していた。 戦禍の子ども達は、腕に自分の名前を書いていた。それは死んだあと自分達のことを知らせる為だと話していた。私はひどく苦しい気持ちになって、しばらく涙がとまらなかった。…

映画所感🎞️

ミア・ファローといえば、1978年版のナイル殺人事件を観た時に初めて知り、何だかこう内臓に掴みかかってくるような演技をする役者さんだなぁと思っていた。 今夜は『フォロー・ミー』という映画を鑑賞し、思わず飛び跳ねた。良い♡良いではないのォ♡ ミア・…

わたしがブログを書く理由

浴び続ける情報量と体験のなかに日々生きていると、眠っている間にみる夢だけでは、それらを処理出来ない。知覚は立ち上っては消えていくし、こんなにも違う1人ひとりの人間が、よくもまあ一応の秩序に治まりながら生きている。わたしは人間の不思議さに好奇…

おきゃくさん 3

この夏、すきな子が出来た。 すきになる予兆は祭りの日にあった。あの日、園庭では金魚やヨーヨーや提灯といった色鮮やかなものたちが子どもらの目を楽しませていたが、彼女はその日、色を統一していた。どの子もバラバラに選ぶ色を彼女はその日はオレンジな…

おきゃくさん 2

リーフ形の皿にシマアジの薄造りをのせて刻んだ紫蘇をふる。紫蘇は最近やっと克服したもののひとつだ。料理本に飽き、クックパッドに飽き、はて料理に飽きないようにつぎは何をしようと考えていたら、ユーチューブに気に入った料理人を見つけた。料理人とい…

おきゃくさん 1

二、三日前から右目のふちが痒いから、綿棒でつついていた。そうしたら四日目の夜にそこがぷうーっと腫れる。「おきゃくさん来た」 瞬きするたび、じいいん、じいいん。痛みより熱っぽさが勝つ。涙袋がめくれた唇のようにふくれた。時々睫毛が刺さって痛む。…